AV業界で嫌な目にあった「被害者」としての立場を私に期待してくる人たち【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第21回
【未だに答えが出ていない「AV女優としての過去」】
関連して最近よく考えることを書いていこうと思う。
この連載は時折右往左往しながらも、私が私に対して結論を出すために書いているのであって、初めから納得のいく答えがあって書いているわけじゃない。しかしながら、AV女優であった過去について世の中に発信し始めると、とある問題とぶつかることになるのだ。
それは「何かの活動の旗印のような役割を担わせよう」とする人たちが近づいてくることだ。それら大半を占めるのが「AV業界で嫌な目にあった当事者として何か話してほしい」とか「なかなか踏み出せない被害者もいる中で、どうしてご自身の過去を告白しようと思ったのか教えてほしい」という、「被害者」「告発者」といった立場で発信してほしいというものであった。そもそも前提として、AV業界や性産業全般において何らかの被害を受けた人のケアやサポートを行っている団体や個人の活動は素晴らしいと思っている。なかなかやりたくてもできることではないし、きっと多くの人を救ってきた自負があるのだろう。
ただ、私としては現時点ではそういった団体に一定の距離感を保っておきたいと考えてしまうのだ。公平な立場にあるメディアで自分の過去について話すことと、「被害者」「告発者」という立場として発言するのでは同じ内容を話したとしても、大きく意味は異なってくる。
未だに答えを出し切っていない私がその立場で何かを話すのはあらゆる面で不誠実であるし、「こういう話をしないといけない」と何かに縛られてしまうと、私の求める何かにたどり着かなくなる気がするのだ。